果物の皮をむく

リンゴの皮むきを母に教わったのはいつ頃だっただろうか。
たしか小学校中学年か、高学年か。
「刃を人に向けてはいけない」と、刃は自分の左手に向けて、
たとえ手が滑っても、近くにいる人を傷つけないように、右から左へくるくると。
それが「普通のむき方」だと思っていた。

カンボジアではマンゴーをよく食べた。
皮の下の果肉はツルツルすべり、中には大きな平たい種が入っているので、なかなかうまくむけない。
だから、近くに誰かいたら、むくのをお願いしていたのだけど
彼らは刃を前に向けてむくのだ。
左手にマンゴーを持ち、右手に果物ナイフ。その刃を前方に向けて、
まるで鉛筆を削るようにシュッシュとナイフをすべらせる。
危ないなぁ…と思うのだが、彼らはそんなこと気にもしないのか、シュッシュと器用にむいていく。
手をすべらせて手を切ったり、そして誰かを怪我させてしまったりしたら
どうするんだろう…と、いつもハラハラしながら見ていた。

わたしはどちらかというと大らかで、小さい頃から「もっと気にしなさい!」と親から叱られる多かった。
…が、カンボジアにきて、自分がいかに日本人で、知しらず知らずのうちに
「日本的な気遣い」をしているかを思い知らされた。
「日本的な気遣い」とは、「相手を思いやること」に近く、その裏には「自分の行為で相手を傷つけない」とか
さらには「それと同じ気遣いを、相手にも求める」ということまで、含まれているような気がする。
たった「果物の皮をむく」という行為ひとつにも、それが凝縮されているのだ。
だから、むいてもらうたびに、少しハラハラして、ちょっとイライラもしていた。
相手のことも考えてよ…と。そして「ああ、それは日本人的な発想だな」と思い直し
「仕方ないか」で終わるのだが。

たぶん、カンボジア人的な見方をすれば。
もし自分が手を切っても、誰かを怪我させても「ごめーん(気にしない)」
そして怪我したほうも「まあいっか」かな、と推測。
大らかそのものである。

[PR]
by toi-tom | 2018-04-03 09:16 | カンボジア | Comments(0)